400 クラス・モータの「進角」の驚くべき効果

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400 クラス・モータの進角の効果
 まったく気にもしていなかった、というより進角については 400 クラス・モータでは無縁と思い、まったく考えたこともありませんでした。進角目盛もありませんし...。

 ところが最近 QRP からも進角調整ツールなるものが売り出され、少々気になりだしました。早速この道の先輩である新潟の坂本氏にお願いし、進角についての情報を頂きました。受け売りになりますがここで少し紹介させていただきます。
 進角とはモータのコミュテータに対するブラシの取付位置のことだと理解しました。すなわち進角 0 度というのは、モータの回転方向が時計回りでも反時計回りでも同じ特性を示すブラシの位置を指します。たとえば進角 10 度というとモータの回転方向と反対方向に 10 度ブラシの位置を回すことをいいます。

 400 クラスのモータは 10 度程度の進角をつけると魔法にでもかかったかのように飛躍的に効率がよくなります。では実際に販売されている 400 クラスのモータはどうなっているのでしょうか。Mabuchi の 380PH(7.2V)仕様のモータは出荷時 15 度の進角がついています。これはモータの出力軸側から見て反時計回りの回転を想定しています。
グラウプナーの speed 400 モータ単体、 FG ギヤードモータ、ヒロボーの 380(6V) モータ、ロッベモータ単体はすべて進角 0 度で出荷されているそうです。

 進角がついているかいないかを確認するには、モータに適当なペラを取りつけ正回転の時のモータ電流を読み取ります。次にプロペラの向きを入れ替えて(そのままだとプロペラの正・逆転時の負荷が変わってしまうので)逆回転の時のモータ電流を読み取ります。同じ電流値なら進角 0 度ということになります。以上のような方法でヒロボーの 380(6V) モータに E-prop プロペラアダプターを取り付けて sero-nauto 6.5x4 ペラを 4 セルの電池で回してみたところ、正・逆転ともに 7.2A の電流値を示しました。

 坂本氏の話では、 7 セルで 8A でもかなりパワーが出て、フライト時間も 1.5 倍くらいになるそうです。そんなに素晴らしくよくなるのなら、進角調整ツールなるものを購入して早速試してみなくてはと思いました。そう思うとすぐにでもやってみたくなる悪い性分で、ツールを注文して届くまでが待ちきれず、手元にあった材料で早速自作してしまいました。

 エンドベルにあいている二つの丸穴に、 2mm のネジを差し込んで回せば何とかなるだろうと思い、鉄板製の対辺 10mm の板レンチ(何かの組立品についてきた安物のレンチ)を 2 つ用意し、片方には、エンドベルにあいている穴ピッチ(15mm)に合わせて 2mm のタップを 2 つたて、そこに 2mm ネジを締め込みました。裏側に出たネジ部分を約 1mm ほど残るようにヤスリがけをして出来上がりです。もう片方はモータ取付ネジと同じ穴ピッチ(16mm)に 2.8mm のドリルで穴をあけて出来上がりです。進角調整するときにモータ取付穴に 2.6mm ネジで締め付けておきます。待てる人は送ってもらったほうがいいと思います。値段も QRP で 960 円と手ごろで、詳しい説明書もついているようですから。

 私の場合の調整方法を説明します。既に京商のギヤユニットを取り付けてあるので、モータ軸側は適当なところにドライバを差し込んでテコ代わりにしました。Mabuchi 380PH モータは工場出荷時に 15 度の正転用進角がついています。ところが京商のギヤユニットに取り付けた場合、逆転で使うことになります。この場合逆転用の進角をつけないといけません。逆転用の進角5度をつける場合、正転用の進角 15 度と逆転用の進角5度、すなわち 20 度エンドベルを逆転用の進角方向に回してあげればいいわけです。
 進角はモーター軸の回転方向と逆方向につけるわけですから、今回の場合エンドベル側から見てエンドベルを時計回りに 20 度回すことになります。

 モータカンのサイズを測ってみたら 27.7mm ほどありました。このことからモータ外周寸法は 27.7x3.14=87mm あることがわかります。 20 度回すということは、外周で 20/360x87=4.8mm になります。エンドベル側から見て外周で 4.8mm 時計回りにエンドベルを回せば 5 度の逆転進角がつくことになります。
予めエンドベルと外周の同じ場所にナイフ等で傷をつけておき、その印から時計回り 4.8mm の外周のところにも印をつけておきます。あとからつけた外周の印にエンドベルの印が重なるまでエンドベルを回します。これで進角調整完了です。

 この進角をつけたことによる効果を見るため、実測データを下表にまとめてみました。逆転用進角 5 度、10 度、15 度のデータを実測してみました。工場出荷時のまま取り付けたときの電流対回転数と、各進角をつけたときの電流対回転数を示しています。Mabuchi 380PH(7.2V)モータに京商ギヤダウンユニット(1.71:1)を取り付け、Kyosho 9x6 プロペラを取り付けての測定結果です。モータはある程度慣らしをしてあります。

モータ
入力電流(A)

工場出荷時のまま(rpm) 逆転用進角 5 度(rpm) 逆転用進角 10 度(rpm) 逆転用進角 15 度(rpm)

3.0

3200

3300

3100

3000

4.0

3700

3800

3700

3400

5.0

4200

4400

4200

4100

6.0

4500

4700

4600

4500

7.0

4900

5200

5000

4900

8.0

5200

5600

5400

5400

9.0

5500

5900

5700

5700

10.0

5800

6100

5900

5900

 上記データは手持ちのモータ 1 個だけでの実測値です。モータによってばらつきもあると思います。
この表から進角をつけたことによる効果を計算してみましょう。工場出荷時のままの欄の 5200rpm のモータ電流は 8.0A ですね。進角 5 度をつけたときの欄の 5200rpm のモータ電流は 7.0A と少なくなっています。このことからわかるように 5200rpm 回すのに 8.0A 流れていた電流が 7.0A で済んでいます。7/8=0.875 すなわち 87.5% の電流で同じ回転数を引き出すことができるわけです。 5 度の逆転進角をつけた結果、実に 12.5% も消費電流が節約できていることがわかります。

 工場出荷時の進角が 15 度ついている(新潟の坂本氏がマブチモータの技術部に電話で確認)ので、逆転の場合の逆転進角も 15 度つけるのが最も効率がいいのではないかと思いましたが、今回の組み合わせでの実測結果は以外にも逆転進角 5 度程度が最も良い結果を示しました。これは、取り付けるプロペラ、ギヤ比等の組み合わせによっても変わってくる可能性があります。
皆さんもぜひ試してみてはいかがでしょうか。


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1998/03/18 inserted by FC2 system