Tadiran リチウムメタル電池について

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小型軽量大容量と素晴らしい電池だが、使い方次第では使い物にならなくなることもある
 公称電圧 3V 、公称容量 430mAh と 780mAh の 2 種類の電池があります。イスラエル製です。小型軽量大容量とインドアエアプレーンをはじめ小型軽量機に使った場合、1 回の充電で長時間の飛行が期待できるとても素晴らしい電池です。反面高価なのと取り扱いに若干の注意が必要です。使い方によっては十分な性能を発揮できずに使えなくなってしまうことがあります。

 特に Indoor-plane では 430mAh タイプの電池が多用されています。以下この電池に関しての情報をまとめてみました。3V 、430mAh の容量を持ちながら 12.5g と軽く、単セルから 3 セルまでの組み合わせで使われています。単セルの場合はおもに全備重量 50g 以下の飛行機に使われていて、受信機への供給電圧を DC-DC コンバータで 5V 程度に昇圧して供給しています。2-3 セルの組み合わせではそのままスピコンに繋いで使うことができます。

 いずれの組み合わせでも、適切に設計された飛行に機搭載した場合、1 回の充電で 30 分から 1 時間の飛行が可能です。このクラスでは重量算出でニッカド電池に比べ 7 倍もの飛行時間が見こめます。

 他にメモリ効果がない、充電したまま長期保存しても自己放電が少ない、充電サイクルが 300-700 回ある。使用できる温度範囲が広い、連続 1A の電流が取り出せる。過電流保護回路が内蔵されている等多くの特徴があります。特にメモリ効果がないので使い終わった電池を放電する必要もなく、そのまま追い充電ができるのは素晴らしいことです。反面急速充電ができない、充電満了電圧が 3.40V を超えてはいけない。2V 以下になるまで使用してはいけない等取り扱いには注意を払う必要があります。

 Tadiran リチウム電池専用の充電器を自作することも可能ですが、充電満了電圧の許容値は 3.40V±1% 程度とかなり厳しいものです。充電電流は 80mA 以下で充電する必要があります。Tadiran 電池を充電できる充電器が何種類か販売されていますが、私は専用の小型充電器を使用しています。1-3 セルの電池が充電できますが、あらかじめセル数に合わせた設定を行ってから電池を接続して充電します。 75mA の定電流で充電満了まで約 7 時間かかります。電池も充電器も国内での調達が可能です。schulze 等の充電器に慣れてしまっているとついセル数の設定を忘れてしまうことがあります。 2 セルの電池を 3 セルの設定で充電してしまったような場合、確実に電池は死んでしまいます。仲間で何例かこの事実を耳にしています。高価な電池なので気をつけましょう。また、使用中単セルあたりの電圧が 2V 以下にならないようにしないといけません。これは結構神経を使います。一般にオートカットのあるsスピードコントローラは 5V 前後でオートカットが働きます。3 セル電池を使用している場合オートカットが働いたときには単セルあたり 2V を切ってしまいます。2 セルの場合は比較的問題ないと思われますが、電池容量を十分に使いきらないうちにオートカットが働いてしまうことが考えられます。使うスピコンによってはオートカットのないものもあるので 2 セルの場合でも十分な注意が必要です。また、連続で 1A の電流を取り出すことは事実上困難で、連続で流す必要がある場合は 0.7A 程度の電流にとどめるのが無難です。このときの電池電圧は実測値で約 2.75V 程度になります。従来 Ni-Cd 電池で飛ばしていた飛行機を Tadiran 電池に変更する場合、このあたりのことを考慮する必要があります。しかし瞬間的には 2A 程度の電流を流せることも確認しているので、短時間ならパワフルな飛行も可能です。

 私の使用している Tadiran 電池もつい先日、 3 セル組み合わせの 1 セルだけが極端に性能低下をきたしてしまいました。"FunFan2" 67 フライト目の出来事です。充電直後の電池で離陸時には全くパワーの低下を感じなかったのですが、背面飛行中に極端なパワー不足でコントロールできなくなり、偶然にもハンドキャッチで事無きを得ました。再度飛ばしてみましたが 1 分もしないうちにフルパワーで水平飛行をするのがやっとという状態になりました。以前モーターのブラシを焼損してしまった経験から今回もモータがだめになったと思い、予備に用意しておいたモータユニットに載せ替えてみました。ところが結果は全く変りません。飛行が終わった後、電池の 1 セルだけがなんとなく温かく感じます。家に帰って再充電し、それぞれの端子電圧を測ってみました。3.39V、3.39V、3.06V とやや温かく感じたセルの電圧が低めです。そこで異常と思われるセルにモータを繋いで回してみました。0.4A ほどの電流ですがみるみるモーターの回転が低くなっていき、端子電圧も徐々に低下し、やがて 2V を切ってしまいました。結局 1 セルだけ電池の内部抵抗が高くなってしまっていたことがわかりました。どのような理由からこのような結果になったのか原因はわかりません。1 フライトの平均飛行時間が 6 分程度として延べ 400 分 (6-7 時間) で電池がだめになってしまいました。不良セルを新品のセルと入れ替えて 3 セルに組みなおしてみました。テストした結果以前のパワーに戻りました。ロットが違う電池の組み合わせなので今後気をつけながら使ってみたいと思います。

 この Tadiran リチウムメタル電池はニッカド電池のように過酷な条件では使えないのです。しかし適切な管理のもとに使うならこれほど素晴らしい性能の電池は今のところ他にありません。

■追加情報
 FunFan2 に 3x430mAh Tadiran 電池を搭載し、 2000 年 10 月 28 日の飛行会で延べ 78 フライトになりました。 FunFan2 が完成してちょうど 1 年になります。その間モータのブラシが一度焼損し、Tadiran 電池も 1 セルだけ交換しました。78 フライト目の飛行のときになんとなくパワーのなさを感じたので、帰宅してから満充電した電池に負荷をかけてそれぞれのセル電圧をチェックしてみました。交換したセルは問題ないのですが、他の 2 セルがかなり低い電圧を示しました。結局内部抵抗が高くなってしまっていたわけです。前回 1 セルだけ交換してから 10 フライト目です。 FunFan2 は結構過激な飛行を繰り返していたとはいえ、通常飛行時の電流は約 0.6-0.7A 、フルパワーでも 1A ほどの設定です。充電回数約 30 回。通算 7 時間程度の実用寿命は短いといわざるを得ません。

 3 セル直列にして使用してきたわけですが、結局ほぼ同時に寿命になってしまいました。平均 1.5C 程度の電流で使ってきたことになりますが、ニッカド電池なら全く問題にならない電流値も Tadiran リチウムメタル電池ではかなり過酷な条件で使用してきたことになるのでしょうか。カタログスペックからは大きくかけ離れた結果となってしまいました。


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2000/11/05 inserted by FC2 system