リチウムイオン電池の取り扱いについて

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インドアエアプレーンに使われることの多くなったリチウムイオン電池をより安全に扱うための補足事項
 このところ急速にインドアエアプレーンの動力として、携帯電話用のリチウムイオン電池が使われるようになりました。小型軽量でエネルギー密度が非常に高く、特に軽さが飛行性能に大きく影響する Indoor-plane の動力源に使って、その素晴らしい実力が認められるようになったからです。

 どのような電池も取り扱いにはそれなりの注意が必要ですが、高エネルギー密度と高性能な電池ということから、携帯電話の電源として膨大な量のリチウムイオン電池が使われています。通常の使い方をする限り、安全性には全く問題ないと思われますが、電池単体を取り出して模型飛行機の電源として使うわけですから取り扱いにはそれなりの注意が必要になってくるわけです。

 ではどのように注意しながら使えばいいのでしょうか。電池パックのラベルには、プラスマイナス端子のショート、火中投入や加熱、釘刺し、直接半田付け、分解、改造等をしないようにかかれています。しかし、分解、改造をしないと使えないので、分解して電池単体を取り出しても安全に使えるようにリチウムイオン電池の性質を調べてみました。

 電池を扱う上で守るべき事項はたくさんあるのですが、常識的な注意事項のほかに以下のことを理解していればインドアプレーンの電源として比較的安全に使えると思われます。

 以下は松下電器リチウムイオン電池テクニカルデータブックと、私にアドバイスをいただいたリチウムイオン電池取り扱いについてのメールを参考に、インドアエアプレーンに使う前提で私なりにまとめてみたものです。

 電池パックはリチウムイオン電池と保護回路が組み合わされ、容易に分解できないようになっているのですが、電池パックを分解してリチウム電池のみを取り出し、保護回路を取り外して使うことになります。保護回路には通常過充電防止回路、過放電防止回路、異常発熱による温度ヒューズ遮断回路、サーミスタによる電池パック内の温度監視制御回路、二重安全のためのトータル充電タイマ等が含まれています。

 はずした保護回路はそのまま携帯電話側に取り付けるので、回路的には全く変わらないことになります。しかし、電池本体から保護回路が離された状態で充電することになるので、電池そのものの異常発熱と電池の温度監視ができなくなるわけで、取り扱い者が常に事故を未然に防ぐよう注意を払い、ちょっとでも異常を感じたら即時使用を中止する必要があります。

○リチウム電池の定格
 リチウムイオン電池は充電電圧 4.2V が最高電圧になり、公称電圧は 3.6V - 3.7V でニッカド電池の 3 倍の電圧があります。充電電流の推奨値は 0.7C となっていて、定電圧・定電流で充電されます。放電電流には通常 1C 以下を推奨しています。放電時は放電終止電圧が 3.0V 以下にならないようにします。セル電圧が 2.9V 以下の低電圧時は 0.1C 以下で充電を行うよう記載されています。ニッカド電池でみられるようなメモリ効果がないのが大きな特徴です。

○リチウムイオン電池の容量
 2 時間率で完全充電した電池を 0.2C で放電して 3.0V まで電圧が低下した時の平均容量を電池の容量としているようです。

○大電流で放電した場合の容量
 携帯電話で最も多く使われていると思われる 550mAh 容量のリチウムイオン電池を例にとると、 550mA の電流で放電させる場合を 1C 放電といいますが、インドアエアプレーンでは  0.3A - 1.1A ぐらいの電流で使用すること多く、およそ 0.5C - 2C で放電することになります。放電電流が多くなるほど容量が少なくなります。
 データブックから放電々流による容量の変化を大雑把にまとめてみました。
 1.0C 放電では公称容量の約 85% 容量に、1.5C 放電では約 78% に、 2.0C 放電では約 66% の容量になります。
 放電々流は前述したように通常 1C 以下を推奨していますが、 2C のテストデータも公表されていたので、 2C の電流で使用しても問題ないと思われます。ただしその場合は容量が約 2/3 になります。この容量値は実用範囲と思われる、セル電圧が 3.5V になるまでの容量を試算したものです。

○リチウムイオン電池の寿命
 1C 放電を 3.0V になるまで 500 回繰り返したあとでも約 80% の容量があるようです。なるほど、私が携帯電話で 1 年半も使った電池がインドアエアプレーンで立派に使えているのも納得できます。

○過充電・過放電の危険性について
 専門的な立場からメールでいただいたアドバイスを以下に抜粋してみました。
過充電の危険性 充電時の充電電圧は電池の種類メーカなどにより 4.1V と 4.2V の 2 種類有ります。  4.1V のものは 4.2V で充電すると危険なので 4.1V を超えないようにします。 これらの電圧を超えて充電すると、リチウムがイオンの状態で存在できなくなり、金属として析出をはじめ高い電位を持ったリチウム金属の結晶が正負極の間でショートを起こし、熱暴走が発生、爆発に至ります。  
過放電の危険性

通常使用して 2.0-2.5V 以下に電圧が下がった電池を充電すると電池内部で 銅電極が溶出、デンドライト(溶出した金属が再結晶化して針状などになり)となり 正負極間で内部ショート、発熱、発火、場合によっては爆発に 至る危険性がとても大きくなります。 


○まとめ
 上記の知識と使用範囲を守れば、リチウムイオン電池をインドアエアプレーンの電源として安全に使えるのではないでしょうか。充電器も携帯電話そのものを使うわけですから...。また、市販されているリチウムイオン電池が充電できる充電器も、電池単体で充電できるように設計されているわけですから、携帯電話から取り出した電池を使うのも問題ないと思います。
 Ni-Cd 電池の充電時に経験する充電完了時の電池の発熱は、リチウムイオン電池充電時には感じられません。データブックによると公称容量まで充電したら充電をストップするようになっていて、過充電にならないようにしているためと考えられます。したがって少ない放電々流で使用した場合、充電容量と放電容量の差があまりないと思われます。過放電については、飛行機の動力として使う場合、スピコンのオートカットを外して使うケースが多いので余裕を持った飛行時間を心がけ、こまめに充電するような使い方が好ましいと思われます。

 今では多くの仲間が Indoor-plane に携帯電話用のリチウムイオン電池を使っていますが、現在まで問題が発生した事例は全くありません。しかし、電池単体を取り出して使うことになりますので、扱い者自らの責任で細心の注意を払いながら使うことをくれぐれもお忘れなく。

 リチウムイオン電池を使って安全にインドアエアプレーンを楽しむことができたらという思いからまとめてみましたが、リチウムイオン電池に関する十分な専門的知識をもたない私が趣味の範囲でまとめたため、適切でない表現も含まれていると思いますがお許しください。なお、専門家の方から更に安全に使用するためのアドバイスもいただけたらと思っております。


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2001/05/23 inserted by FC2 system