"Che-ez! SPYZ" デジタルカメラを空撮用に改造

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わずか 34g という軽量なデジタルカメラを空撮用に入手
 "Che-ez! SPYZ" チーズスパイシー、なんといいネーミングだ。 34g という軽さがすごい。電動飛行機に積んで空撮しよう!ということで迷わず調達。

 35 万画素で単 4 型アルカリ電池 1 本で動作する。今のハイスペックデジタルカメラには及ばないが PCMCIA カードと比べてもその小ささがわかる。 7980 円とえらく安い。トイデジタルカメラといった位置付けでの開発による価格設定だからか。それにしてもエレクトロニクス分野の進歩のすごさを見せつけられる思いがする。

 この時点で富士フィルムアクシアから厚さ 6mm 充電式リチウムイオン電池内蔵で 35g というさらに軽いデジタルカメラが発表された。こちらも面白そう。密かにに内蔵されているポリマーリチウムイオン電池が軽量インドアプレーンの電源に使えるのではと考える。おいおい、どうするんだ電池をとられたカメラのほうは。

 改造する前にとりあえず撮影してみた。スナップ撮影程度ならまずまずの解像度である。私がホームページを立ち上げたばかりの時に初めて手にしたカシオ QV-10 デジタルカメラより写りがいいのだ。この小ささで 35 万画素 VGA サイズ 640x480 ピクセルで 26 枚の画像が記録できる。

 ファインダーはお世辞にもいいとはいえない。やはりおもちゃレベル。 CMOS イメージセンサーを搭載していて画像のメモリには SDRAM が使われている。電池がなくなると画像が消えてなくなってしまうのだ。これはいただけないと思ったがこの手のデジタルカメラは大半がそのようだ。コストの問題なんだろうな。電池がなくならないうちにパソコンに取り込むように説明書にも書かれている。しかし余計な機能を排除して小型軽量に徹したこのデジタルカメラはまさに電動飛行機の空撮用に設計されたのではないかと思ってしまう、のは私だけか。

 あまりにも小さいデジタルカメラなのでシャッタをサーボでメカ的に押すのはスマートとはいえない。何か電子シャッタとして利用できるものはないだろうか。そうだ以前小黒さんからもらった機体発見ブザーを使ってみよう。アイデアはよかったがブザーが断続音で鳴動するので使えない。世の中そんなに甘くはなかった。悩んだ挙句小黒さんにお願いして電子シャッタを作ってもらった。なんとイージーで他力本願なんだ> toko 。これではいかん、そろそろ PIC の勉強をしなければ。次なる計画も控えているし...。 PIC の魅力に心ひかれる今日このごろなのだ。

 これがその電子シャッタ。受信機のからのパルス幅の変化をトランジスタの ON/OFF に変換している。つまり地上から送信機でカメラのシャッタを電子的に切ろうというのだ。

 この画像はチーズスパイシーに拡大レンズを当てて撮ってみた。工夫次第ではマクロ撮影もできそうだ。

 早速カメラを分解してみた。意外とシンプルにまとめられている。右側のポップアップファインダは簡単に外せる。裏側には小さな液晶と電源スイッチ兼モード設定ボタンがある。電池スペースがとても大きく感ずる。

 シャッタボタンのスイッチは片側がアースに落とされている。もう片方をアースに落とせばシャッタが切れる構造になっている。ふむふむ簡単にできそうだ。電子シャッタの出力トランジスタのエミッタをシャッタスイッチのアースとつなぎ、シャッタスイッチの片方を出力トランジスタのコレクタにつなげばいいんだな。

 早速受信機の空きチャンネルに電子シャッタをつないで送信機で操作してみた。おおっ、シャッタが切れた!次々とシャッタ操作をしてみる。いける。うまくいったと喜んでいたら、しばらくして電源が切れてしまった。

 説明書に目を通すと 30 秒間シャッタを押さないでいるとスタンバイモード機能が働くと書かれていた。思わぬ落とし穴に遭遇。基板をしばし眺めるもスタンバイモード機能を解除するすべは見つからず。早く空撮がしたくてこのまま機体に搭載し、 30 秒以内に次々とシャッタを切りながらのあわただしいテストフライトを行った。

 空撮を終えた機体を無事回収。早速デジタルカメラを機体から外して裏側の液晶表示を見たら「00」となっている。果たして撮影できたのか?かなり不安。帰宅後早速パソコンに取り込んで見た。おおっ 26 枚全部写っている。「フォトアルバム」で画像の一部を紹介。空からの画像を見るとなんだか鳥になった気分だ。しかもなかなかよく撮れている。

 USB ケーブルを接続してパソコンに画像を取り込んだときはカメラがスタンバイモードにならない。 USB ケーブルをつなぐとケーブルを通じてカメラに 5V の電圧が供給されることがわかった。このあたりに何かスタンバイモードを回避する手がかりがありそうだ。

 電池で動作しているときもカメラ内部は 5V の電圧で動作していることを発見。内部で昇圧していたのである。なるほどこれなら USB ケーブルからの 5V とも互換性があるわけだ。でスタンバイモードは?はい、まだわかりません。

 早速 USB の規格を調べたら線は 4 本しかないのだ。 5V の電圧を供給しているのは外側の 2 本である。しかも 5V で動作しているならスピードコントローラの BEC 電圧がそのまま使えそうだ。簡単じゃないか、 BEC 電圧をカメラの USB 端子の電源ピンにつなげばきっとうまくいくはずだ。

 カメラ側の USB コネクタは miniB という規格ですごく小さい。しかもピンが 5 本ある。よく調べたら 4 番ピンは使っていない。さて半田付けと思ったらとても狭くて半田付けができない。そこで USB コネクタの背面についているカバーを強引に取り去ってしまい、苦労して何とか半田付けした。 BEC からの 5V がこれで供給でき、あたかも USB ケーブルから電源が供給されているかのように振舞うはずである。はずであったがそうは甘くなかった。ん、どうして?

 USB ケーブルをつないでみるとピッ!と音がしてカメラの電源が入る。なぜ?不思議である。 USB コネクタの 1 番ピンにはどちらの場合も 5V の電圧が供給されている。いよいよピンチ。 miniB USB の 1 番ピンに供給した BEC からの電圧をテスタで確認しているとき突然ピッ!と音がしてカメラの電源が入った。おっ!どうして?

 それは偶然の発見だった(なんと大げさな)。何の事はない、テスタリードが周りの金属フレームに触れて 3 番ピンがアースに落ちたときにカメラの電源が入ったことがわかった。でも 2 番 3 番のピンはパソコンと通信をするための線の筈だからアースに落とすわけにいかない。恐る恐る 3 番ピンをアースに落としてみるとカメラはあたかも USB ケーブルをつないだときのように振舞うのである。撮影にも支障がない。しかし 3 番ピンをアースに落としたままではカメラの画像をパソコンに取り込むときに問題が起きる筈だ。よし、ここにスイッチを入れよう。 BEC 電源で使うときにスイッチを ON にして 3 番ピンをアースに落とし、 USB ケーブルに接続するときはスイッチを切ってアースから浮かすのである。我ながら久々のひらめきである(でもないか)。

 きちんとカメラの内部にシャッタ基板をセットして組み上げた。再度確認。 BEC からの電源でカメラが動き、電子シャッタで撮影できるようになった。もちろんあの悩ましかったスタンバイモードも回避できている。 USB ケーブルをつないでもきちんと動作する。これで完成、と思っていたら次なる問題が発生。乾電池での撮影ができない。電源スイッチは入るがシャッタが切れないのである。ま、空撮用に改造したので別に電池で撮影できなくてもいいのだが、完ぺき主義の私(どこが?)としてはそれでは気がすまない。結局また分解することになったのである。

 カメラのシャッタスイッチに至る電子シャッターからの配線を浮かすと電池でも問題なく動作する。どうもこのあたりに問題がありそうだ。そこで手持ちのフォトカプラを使ってシャッタ回路を隔離したところ一発で解決できたのである(変更後の回路図)。カメラの電源も BEC から供給できるので乾電池を積まなくても空撮ができるしその分軽くなる。めでたしめでたし。

 改造した空撮デジタルカメラの内部驚きの完成重量。受信機へはインドアエアプレーンで多用している小型軽量な JST コネクタを介してエクステンションケーブルで接続する。撮影が終わったら BEC 電源を切る前に画像を保持するために乾電池をセットする。

 飛行機へのデジタルカメラの積み降ろしは簡単な方法がいい。軽いことも条件だ。そこでバルサブロックの切れ端で V ブロックを作ってみた。カメラの取り付けはこんな感じになる。輪ゴムと幅細のベルクロテープでカメラを保持する。これなら外すのも簡単だ。 "ビーグル・モス" の胴体重心付近にこの V ブロックを両面スポンジテープで貼り付けた。カメラをセットするとこんな感じになる。脇から見るとこんな感じだ。両面スポンジテープとカメラのベルクロテープがモータの振動をカットしてくれるだろう。

 飛行機にカメラを搭載するときは乾電池が必要ないので、少しでも軽くするため電池カバーも外す。カメラ本体、カメラと受信機を接続するエクステンションケーブル (1.4g) 、取り付け V ブロック、両面テープ、ベルクロテープ、輪ゴム等空撮に必要なすべての機材をあわせても 35.8g しかない。おそらくこんなに軽い空撮デジタルカメラシステムはほかにないだろう。ちょっとした電動飛行機にだってこれなら手軽に搭載できてしまう。 400 クラスギヤダウンの "ビーグル・モス" に搭載しても全備 534g にしかならない。

 もう少し手を加えればまだ軽くできる。空撮専用にするならいっそカメラのケースも取り去ってしまいたい。そうすれば 20g 以内に収まるとみた。えっ、いいかげんにしろって...いえいえマジです、はい。

 この改造をした後に二度目の空撮を行ってみた。結果はすこぶる良好であった。「フォトアルバム」をみてほしい。


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2002/04/04 inserted by FC2 system