"540FunFly" トルクロールに向けて

[Previous] [Next] ["540FunFly" Index]


540 クラス電動飛行機のトルクロールに必要な推力は?


 エンジンによるファンフライ機は私が飛ばしているエリアでも多くの人が楽しんでいます。つい先日も青木さんが "Fun15" を携えて我々の目の前で華麗な飛行を披露してくれました。タイトル画像で奥の 2 機が青木さんのエンジンファンフライ機で、その手前が岸田さんのブラシレスモーター搭載ファンフライ機、一番手前が私の "540FunFly" です。青木さんの "Fun15" エンジンファンフライ機は翼面積 27dm2 、全備重量 780g で私の "540FunFly" と同じ翼面積です。一番大きな違いは翼面荷重で "Fun15" の 29g/dm2 に対して 540FunFly" では 35g/dm2 (7xRC2000) と重いのです。エンジン機でも軽量化には相当の注意を払っているということでした。電動で翼面荷重を軽くしようとすると電池がかなり重いので並外れた機体の軽量化が必要になります。岸田さんのブラシレスモーター搭載機は電動とは思えないほどパワフルなパフォーマンスを発揮しています。

 "540FunFly" もようやく 32 フライトしました。ナイフエッジときの左右のクセをミキシングで調整し、少し慣れてきたところです。 400 クラスに比べてどっしり安定した飛行はなんともいい感じです。通常の飛行なら 02H モーターのパワーで十分という感じがしますが、少しでもパワーアップを図るためピニオンギヤを 20 枚から 21 枚に変更してみました。 7 セル RC2000 電池で初期電流が 31A から 34A になり、垂直上昇時のパワーが少し力強くなりました。 30A 台という恐ろしい電流にもようやく慣れてきました。坂本さんに言わせるとこの程度の電流はちょろいそうです。

 私の飛行機は現在 7 セル RC2000 電池を搭載して全備重量 955g です。内訳は電池 420g 、 02H モーター 170g 、Speed 50 スピコン 35g 、京商ギヤユニット(改造) 31g 、折りペラ (aeronaut 10x7) +ハブ+プロペラホルダ 29g 、受信機 (Futaba R113F 改) 14g 、 9g サーボ 4 個を含む機体重量が 256g になります。

 20 枚ピニオン時、RC2000 で普通に飛ばして 6 分ほどの飛行ができ、単純計算で平均電流は約 18A(140W) になります。初期フルスロットル時の電流は 31A(230W) 、中盤ではフルスロットルで 25A と初期の 80% ほどです。

 02H モーターの効率を調べてみました。田宮のオプションパーツ「ダイナテック 02H 7010W ローター」のパッケージ裏にある 02H ノーマルローターの出力グラフを参考にしました。 7.2V 固定電圧における出力グラフからの算出です。 31A のモーター電流で 140W のモーター出力になり、このときの入力が 223W なるので効率は 170W / 223W = 0.76 、つまり 76% と読み取れます。このあたりが 02H の最大効率と思われます。ちなみに 40A で 69% 、 50A では 66% の効率になります。

 電動飛行機でトルクロールをするにはどの程度のパワーが必要なのでしょうか。以前、トルクローラー小野さんから飛行重量の 3 割増しぐらいの推力があればトルクロールができるという話を聞いたことがあります。 1000g の飛行機がトルクロールするにはは 1300g の推力が必要になります。この推力は中盤で発揮してほしいので、初期では 1600g ほどの推力が必要になります。これだけ大きな推力を作り出すことができるのでしょうか。

 02H モーター出力 170W(入力230W) のときの静止推力がほぼ 1000g あります。モーター出力と推力が大雑把に比例するとして 1600g の推力を得るには 270W のモーター出力が必要なります。 この出力は 02H の標準ローター 6513W では出せないことがグラフからわかります。 7010W ローターでも 70A 程のモーター入力になってしまうのです。仮にこれだけの電流を流せたとしてもモーターの効率は 52% と相当悪くなってしまいます。実に電池の内部抵抗による電力ロスが 400W 以上にもなってしまうのです。ブラシモーターでは対応できそうにありません。これはもう効率のよいブラシレスモーターの守備範囲です。

 ではどのようなブラシレスモーター選べばいいのでしょう。坂本さんがブラシレスモーターに関する多くのデータを公開しているので関連 HP を何度も読み返してみました。しかし簡単に答えを導き出すことはできません。坂本さんの話しではまだ公開していない膨大なデータがパソコンにあるということです。目的に合ったモーターを選び出すのは簡単ではなさそうです。

 いま使用しているギヤユニットに取り付けて使うことを前提に、数あるブラシレスモーターの中から 1600g の静止推力が出せそうなモーターを選択してみました。岸田さんが使っているレーナー 1520/10 は 540 ファンフライ機にとてもよさそうです。ところが代理店に在庫がありません。そこで在庫のある中から選ぶことにしたのですが、これまたよさそうなターン数のモーターは在庫がありませんでした。結局少々重くなりますがレーナーのベイシック・シリーズ 4200 を選択することにしました。最大効率を発揮する Kv 値が 4200 と言うことで現在搭載している 02H に最も近い値であること、ギヤユニットのギヤ比 (3.6:1 〜 3.43:1) を大幅に変更しなくても使えそうなこと、最大入力電流 55A 、最大出力 700W と余裕度が大きいこと、重量が 145g と 02H より 20g ほど軽くなること、 02H と取り付け穴の互換性があること、価格が安いことなどを考慮した結果です。

 組み合わせるスピコンはフューチャー 45be にしました。連続最大電流 45A 、短時間最大電流 60A というものです。スピコンにも色々特徴があるようですが、細かいことはわかりません。バージョンによってもかなりの違いがあるようです。

 早速ブラシレスモーター、スピコン、プロペラ、コネクタ等を注文しました。ところが在庫はありませんでした。結局予約注文をして入荷を待つことにしました。

 注文を急いだのには理由があったのです。実はあの有名なトルクローラー小野さんが電動飛行機でトルクロールを試したいということでわれわれのフライトエリアに出かけてきてくれることになったのです。できればパワーアップした飛行機で小野さんに飛ばしてもらえればと思ったのですが、残念ならが間に合いそうもありません。

 ブラシレスモーターの最大効率は 80% を超えます。最大効率時 270W のモーター出力に必要な入力は 340W と試算できます。 7 セルで 52A 、 8 セルで 43A 、 9 セルで 37A の電流になります。 RC2000 の内部抵抗 5mΩ/セル(坂本さんの HP データから借用)を考慮しての計算です。 7 セルでは電池内部での電力ロスが 95W にもなってしまいます。 8 セルで 74W 、 9 セルでも 62W のロスになります。電池内部抵抗による無駄な電力消費がいかに大きいかがわかります。電力は電流の 2 乗に比例するので電池内部での電力ロスを減らすには電流を低く抑えるほうが得策です。

 "540FunFly" にブラシレスモーターを搭載したとして 8 セル電池を搭載すると全備重量が 1000g ほどになります。 9 セルで 1060g 。全体の半分は電池の重さになってしまいます。モーターパワーの半分は電池を飛ばすために使われるわけです。電動飛行機では電池重量も大きなネックになっているわけです。

 この原稿を書いているときに岸田さんからニュータイプの軽量な電池を調達したとメールをもらいました。 CP-1700SCR の 8 セル電池で重量 378g ということです。 7 セル RC2000 に比べて 42g 軽くなります。ブラシレス搭載時試算で全備重量 900g と軽くなります。電池のエネルギー積が 16.32Wh と 7 セル RC2000 の 16.8Wh とそれほど変わりません。これで内部抵抗が低ければ文句無しです。飛行機重量 900g を基準に計算すると必要初期推力は 1450g でよいことになります。とするとモーター出力は 247W 、入力で 310W と試算できます。 CP−1700SCR の内部抵抗を少し多めに見積もっても初期 39A の電流でよいことになります。電池内部抵抗による電力ロスは 67W 、スピコンのロス 9W と試算できます。その後岸田さんはこの軽量な電池とブラシレスモーターの組み合わせですばらしい飛行をしています。

 試算はあくまでも大雑把なので実際とは大きく違っているかもしれません。ああだこうだと夢を描いているときが楽しいんですね。それにしても待望のブラシレスモーターはいつ届くのでしょうか。

 私が飛ばしているフライトエリアでは土手斜面に着陸させますが、適度に生えた草はクッションの役目をしてくれるので胴体着陸にとても具合がいいのです。ところが "540FunFly" は水平尾翼の動翼にマスバランス翼を採用しているため、着陸時に固定翼と動翼の隙間にしばしば草が挟まり、動翼が折れてしまうことがあります。そこで固定翼前縁に竹ひごでプロテクタをつけてみました。その後何度か飛ばしてみた結果、草の挟まる度合いが減ったようです。


[Previous] [Next] ["540FunFly" Index]
inserted by FC2 system